生物系研究者のpythonとか画像解析とか論文とか

主に生物系研究で使えるpythonとか画像解析とか論文の話とかをザックリ書きます

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断食は肺がん治療に効果があるか

肺がんの化学療法

今回対象としているのは術前補助化学療法で、アジュバント化学療法(Adjuvant Chemotherapy) と言う。 手術の前に抗がん剤を投与し、がんの切除をしやすくするためや、臓器の機能を温存のためにがんを小さくすること目的とする。 これまでにも絶食が抗がん剤の効果を高めることが示唆される研究はあったが、臨床試験は十分になされてこなかったため、 今回筆者らが絶食が肺がんの術前補助化学療法にどのような効果があるのか臨床試験を行なった。

絶食模倣食は抗がん剤の効果を高めた

絶食模倣食を抗がん剤の投与3日前から食べ始めたグループと通常食を食べたグループを比較したところ、手術前検査で癌が消失また縮小している割合が高くなっていた。 一方で、抗がん剤の毒性を減弱させるということは見られなかった。 しかしT細胞におけるDNAダメージは減少していることからT細胞の保護作用はあるようで、このことが抗がん剤の効果を高めているということもありえるかもしれない。

絶食模倣食とは?

野菜をベースにした低アミノ酸食で、スープや煮汁、液体食、お茶とのこと。 ちなみに実際の献立表?は次の通りで、絶食模倣食というだけあってそれなりに辛そうだが、完全な絶食よりはかなりマシなのだと思われる。

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Supplementary figure 3.

実際にこの食事によって血中グルコース濃度の低下やケトン体の増加が見られており、絶食時のような身体の状態になっていることが示されている。

最後に

今回断食模倣食が抗がん剤治療に良い影響を与えることが規模の大きい臨床試験で見られたことで、今後の肺がんのみならず多くの癌治療の効果を高める簡単な方法として広がるかもしれず、朗報だ。 ところで、最近断食とかゆる断食とか流行っているが、確かに古くから断食が良い影響を身体に与えるということは示されてきており、流行ってもおかしくないものだと思う。しかし、一方で断食終了後は栄養を吸収しやすくなることなどによる悪影響もある。基本的に身体に大きな負荷をかけるということは良い影響のみということはありえないので、医学的に正しい方法をリスクとの兼ね合いを見ながら取ることが望ましい。

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